141文字目。

2階6列22番

誰かに笑われた夢を 今もココで見続けてます

 

ー拝啓、あの日の僕へ 今はココで立っています

 

 

夢みたいな土日が終わって、大河くんはいつもの、5万人の中へ帰っていった。

たった720人の会場が夢の中で、5万人の会場が現実だと思うなんて不思議な職業だ。

たんっ…、ダダン!ていう、バク転するときの振動と足音はもう聞こえない。オフマイクの生声が真隣から話しかけてくることもないし、前髪から流れる汗が数センチ先から落ちてくることもない。手首に巻いたライトブレスの色間違ってるよって客に言われてモソモソ直す必要もないし、声出しサボってるエリアを特定して真横まで行ってチェックする手間もない。

何千何万の歓声に包まれて全国各地で踊る、こっちが、大河くんの日常。

 

 

自信があったんだと思う。自信がついたんだと思った。

 

 

初めての4人だけのステージ。初めてのクリエ以外の単独ライブ。

番組名付きの大道具が無造作に置いてある倉庫みたいなところを通って、小学校の学芸会みたいな門をくぐって、背もたれすらない冷たい長ベンチが無機質に並べられている湾岸スタジオ。客席とステージ、客席と通路の間に一切の柵はない。

はっきり言って驚くほど既存曲だった。体感半分以上見たことあるセトリ。

なんでこんなに楽しかったのかな。たぶん今までで1番楽しかった。

 

 

ベストアルバムみたいだった。

 

時間はなかったんだと思う、えび座のリハと本番やりながら楽屋で作ってたんだろうし健翔も桃山でいないことが多くて、色々いつもと違う環境だったんだろう。「なるべく健翔のスケジュールに合わせるからね」って言ってあげられるひとだから、健翔の負担を考えて新曲増やせなかったのかもしれないし、なかなか思うように集まれなかったのかもしれない。

(とはいえいつもだってNEWSのツアーまわりながらやってるし、毎年歌舞伎やりながらクリエ作ってる人たちもいるわけだからそんなの言い訳にはならないんだけど)

 

それでもベストアルバムみたいに、これを見ればMADEがわかるような、このパッケージを渡せばMADEが今までなにをやってきて今新しくなにができるのか説明になるような、そういう魅せ方になっていた。

新しくファンになった人にも天才ってわかってもらえる、天才のセトリ。

自分たちの曲よりジュニア曲の照明にこだわっちゃうような人だから、今までバックの子たちに割いてきた時間分MADEのことに集中できたのかもしれない。

 

 

もうひとつ。とにかく何も言わなかった。

振りとかコールの説明とか、振付構成演出を秋山がやってるとか衣装は稲葉が作ってるだとかそういう、今まで散々主張してきたそういうの今回は一度も言わなくて、わざわざ言わんでもみたいな、そういうスタンス。

だけどリピーター云々のおごりではたぶんなくて、今回の公演についての説明は毎回欠かさずやっていた。MCは客席の中でやりますーとか後半の某曲の為にじゃんけんしますーとか座って見てねーとか。SNSにネタバレ全部落ちてるって知ってもなお、ちゃんと最後まで意識は「今回が初めての人」に向いていたと思う。

その矛盾てなんなのかなって。全部まとめて自信なのではって。

 

少なからず初めてMADEの現場に来た人もいたはずだから説明不足が不親切なことには違いないんだけど。

言わなくても伝えられるようになったし、言われなくてもわかるようになった。

一目見ただけでもインザルームとブラナイは大河くんの振付だったしOPの白衣装は稲葉が作ったデザインだった。わかるようになった。

 

アイドルに向かって信頼関係なんて都合いいこというつもりないけど、わかってもらえてるはず、伝わってるはず、みんな知ってるはずという自信は、みんな味方だと思ってるということで、彼らが今ここに味方しかいないと思いながらステージに立ってるならそんな幸せなことはない、と思う。

今年から急にリーダーがへらへらした自由人な姿wを見せてきてるのも気を許してくれたからなのではとずっと思っていて、今回の湾岸を見て私の中でそれが繋がった。

もう、彼らの中で私たちは、味方だ。

 

 

新規も古参もまとめて、このセトリで満足させる自信があったんだと思う。

 

確実に新しいファンが来ているという自信と、古参にも文句を言わせないという自信。伝わっているという自信。

MADEは、私たちが見たいMADEをよく知っている。

 

 

 

5万人の会場の2列目で踊って、何人の人が見てくれるんだろう。

目の前のアリーナが後頭部で埋まる景色を何度見てきて何度空気に向かって笑顔振りまいてきたんだろう。

いいじゃないか甘やかしたって。

誰かに笑われた夢を今もここで見続けてるんだろうし、傷だらけのこの足でなんとか立ってるんだろうし、この声が届くならば誰でもいい聞こえますかって何年も叫んでたんだろう。

 

無力な私にできる唯一の応援は、味方でいることだ。